胃がんの治療法とは?種類と選び方をわかりやすく解説
胃がんと診断されたとき、多くの人がまず知りたいのは「自分にはどんな治療法があるのか」という点だろう。胃がんの治療法は大きく内視鏡治療・手術・薬物療法・放射線治療の4つに分けられ、がんの進み具合や体の状態によって、単独で行うこともあれば組み合わせて行うこともある。どれか一つが「正解」というわけではなく、同じステージであっても人によって選ばれる治療は変わってくる。この記事では、それぞれの治療法の特徴と、治療方針がどのように決まっていくのかを整理する。
胃がんの治療法は何によって決まるのか
治療方針は、病期(ステージ)、がんが胃の壁のどこまで深く入り込んでいるか(深達度)、リンパ節への転移の有無、がんのタイプ(組織型や、HER2などの遺伝子・タンパク情報)、そして患者本人の体力や持病といった要素を総合して判断される。ステージが同じでも、深達度や転移の広がり、年齢や体力によって選べる選択肢は変わってくる。
だからこそ、同じ「ステージ2」と言われた人同士でも、実際の治療内容が異なることは珍しくない。担当医は内視鏡検査、CTやPETなどの画像検査、病理検査の結果を踏まえたうえで、その人に合った方針をいくつか提示するのが一般的だ。
治療法は大きく分けて次の4つになる。
- 内視鏡治療(ESD・EMRなど)
- 手術(胃切除術)
- 薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)
- 放射線治療
これらは単独で行われることもあれば、手術と薬物療法を組み合わせるなど複数を併用することもある。なお、使用できる薬剤や治療の選択肢、公的医療保険の適用範囲は国や医療機関によって異なる。この記事は一般的な考え方を整理したものであり、実際に自分がどの治療を受けられるかは、必ず自国のガイドラインや担当医に確認してほしい。
内視鏡治療(ESD・EMR)が選べるのはどんな場合か
内視鏡治療は、がんが胃の粘膜の中にとどまっていて、リンパ節に転移している可能性が低いと判断される早期のがんが対象になる。内視鏡を口から挿入し、胃の内側からがんを含む粘膜を切除する方法で、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とEMR(内視鏡的粘膜切除術)がある。
大きな特徴は、開腹や胃そのものの切除を伴わないため体への負担が比較的軽く、入院期間も手術に比べて短く済むことが多い点だ。とはいえ「内視鏡治療で終わり」と決まっているわけではない。切除した組織は必ず病理検査にかけられ、がんの深達度や広がり、切除の断端(切り口)にがん細胞が残っていないかなどが確認される。この結果によっては、当初は内視鏡治療で対応したものの、追加で手術が必要と判断されることもある。
内視鏡治療の対象になるかどうかは、内視鏡検査や画像診断の結果次第で決まる医学的な判断であり、「早期だから内視鏡でいけるはず」と自己判断できるものではない。気になる場合は、なぜその治療が選ばれたのか、あるいは選ばれなかったのかを担当医に率直に尋ねてよい。
手術(胃切除術)にはどんな種類があるか
胃がんの標準的な治療の柱の一つが手術だ。がんの位置や広がりに応じて、切除する範囲が変わる。
- 胃全摘術:胃をすべて切除する
- 幽門側胃切除術:胃の出口側(幽門側)を中心に切除し、胃の一部を残す
- 噴門側胃切除術:胃の入り口側(噴門側)を中心に切除する
いずれの術式でも、胃の周囲にあるリンパ節を併せて切除する「リンパ節郭清」を行うのが標準的だ。目に見えるがんだけを取り除くのではなく、転移している可能性のあるリンパ節も含めて取り除くことで、再発のリスクを下げることを目指している。
近年は、お腹に小さな穴をあけて器具を挿入する腹腔鏡下手術や、ロボット支援下手術など、体への負担を抑える術式も広がっている。ただし、これらが選べるかどうかはがんの状態や病院の設備・経験によって異なり、誰にでも一律に適用できるわけではない。
手術を受けたあとは、食事の摂り方が大きく変わる人が多い。一度にたくさん食べられなくなったり、少量を回数多く食べる工夫が必要になったり、体重が減ったりすることもある。こうした術後の生活の変化は、手術を受ける前にどんなことが起こり得るのか、具体的に説明を受けておくと心の準備がしやすい。
薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)の役割
薬物療法には大きく分けて二つの使われ方がある。一つは、手術の前後に再発のリスクを下げる目的で行う「補助化学療法」。もう一つは、進行がんや転移のあるがんに対して、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりする目的で行う治療だ。
近年は、がん細胞が持つ特定の分子を狙い撃ちする分子標的薬も使われている。代表的なのがHER2というタンパクを標的にした薬で、これは病理検査でHER2が陽性と判定された場合に検討の対象となる。つまり、すべての胃がんに使えるわけではなく、事前の検査結果によって適応が決まる。
また、免疫の働きを利用してがん細胞を攻撃しやすくする免疫チェックポイント阻害薬も、特定の条件に当てはまる患者で選択肢の一つとなることがある。こちらも対象になるかどうかは検査結果や病状によって個別に判断される。
薬物療法でしばしば話題になるのが副作用だ。吐き気、倦怠感、食欲低下、しびれなど、薬剤の種類によって現れやすい副作用は異なり、同じ薬でも出方には個人差がある。「みんな同じようにつらいのではないか」と不安になる必要はないが、事前にどんな副作用が想定され、どう対処するのかを担当医や薬剤師に確認しておくと、実際に症状が出たときに落ち着いて対応しやすい。
放射線治療は胃がんでどう使われるか
放射線治療は、胃がんそのものを治す単独の治療として使われる頻度は、他の一部のがん種と比べて高くない。むしろ、化学療法と組み合わせて行われたり、痛みや出血といった症状を和らげる目的で使われたりすることが多い。
後者は「緩和的放射線治療」と呼ばれる位置づけで、がんそのものを根治させることよりも、日常生活の質を保つことを目的としている。たとえば、がんによる痛みが強い場合や、出血がコントロールしにくい場合に、症状の軽減を狙って行われることがある。
放射線治療が適応になるかどうかは、がんの広がりや患者の全身状態によって個別に判断される。「胃がんだから放射線は関係ない」と決めつける必要もないし、逆に「放射線をすれば治る」と過度に期待する必要もない。担当医から、その放射線治療が何を目的にしているのかをはっきり説明してもらうことが大切だ。
病期(ステージ)ごとの治療の考え方
以下は、病期ごとの大まかな治療の方向性を整理したものだ。あくまで一般的な目安であり、実際の治療方針は、深達度やリンパ節転移の状況、がんのタイプ、患者本人の体力といった個々の検査結果と担当医の判断によって決まる。同じ表内に当てはまっていても、実際に受ける治療は人によって異なる点は忘れないでほしい。
| 病期の目安 | 主な治療の方向性 |
|---|---|
| 早期(粘膜内にとどまる、転移の可能性が低い) | 内視鏡治療が検討されることがある。深達度や広がり次第で手術が選ばれることもある |
| 進行(胃の壁の深くまで及ぶ、周囲のリンパ節転移がある) | 手術に加えて、手術前後の薬物療法(補助化学療法)を組み合わせることが多い |
| 転移あり(遠くの臓器や腹膜への転移など) | 薬物療法が中心となることが多く、症状緩和のための放射線治療や、状況に応じた手術が検討されることもある |
この表はあくまで大まかな整理であり、実際の判断はここに書ききれない多くの要素を踏まえて行われる。自分や家族の場合がどこに当てはまるのか気になったときは、表と担当医の説明を照らし合わせながら質問するのが確実だ。
治療法を選ぶときに医師に聞いておきたいこと
治療方針を提案されたとき、その場ですべてを理解し納得するのは難しいものだ。次のような点を聞いておくと、後から振り返ったときに判断しやすくなる。
- 提案された治療の目的は、完治を目指すものか、進行を抑えたり症状を和らげたりするためのものか
- それぞれの選択肢のメリットと、想定される副作用・後遺症
- 治療にかかる期間、入院の必要性、仕事や日常生活への影響
- セカンドオピニオンを希望する場合、どう進めればよいか
また、標準治療とあわせて民間療法やサプリメントを試したいと考える人もいるだろう。その場合は、必ず担当医に併用してよいかどうかを確認してほしい。中には標準治療の効果を弱めたり、副作用を強めたりするものもある。そして、これらの多くは効果が科学的に証明されていない点も知っておく必要がある。標準治療の代わりになるものではなく、あくまで担当医と相談したうえで検討するものだと考えておくのが安全だ。
FAQ
Q. 手術をしなくても治療できますか?
がんの状態によっては、内視鏡治療や薬物療法が治療の中心になる場合もある。ただし、それが可能かどうかは内視鏡検査や画像検査の結果次第であり、自己判断はできない。担当医に、なぜその治療法が選ばれているのかを確認してほしい。
Q. 治療期間はどれくらいかかりますか?
内視鏡治療のように数日から数週間で完了するものもあれば、手術後の補助化学療法のように数か月かかるもの、進行がんに対する薬物療法のように年単位で続くものもある。治療法や病期によって幅が大きいため、個別に担当医から見込みの説明を受けることが必要だ。
Q. セカンドオピニオンは受けても失礼になりませんか?
失礼にはあたらない。セカンドオピニオンは、提示された治療方針について別の医師の意見も聞いてみる、一般的で正当な手段だ。多くの医療機関がセカンドオピニオン外来に対応しており、担当医に伝えれば紹介状などの準備を進めてもらえることが多い。
Q. 治療費用はどのくらいかかりますか?
治療内容(内視鏡治療か手術か薬物療法か)や、入院期間、使用する薬剤、そして公的医療保険制度によって金額は大きく変わる。国によって医療保険の仕組みや自己負担の上限制度も異なるため、正確な見込みは医療機関の相談窓口(医療ソーシャルワーカーなど)や、自国の医療保険制度の窓口で確認するのが確実だ。